売上や利益が出ていても、入金より先に仕入や給与の支払いが来れば、手元資金は減ります。資金繰り表は、いつ、いくら入金され、いつ、いくら支払うかを月ごとに並べ、将来の現預金残高を見えるようにする表です。
初めから細かな様式を完成させる必要はありません。まず3か月分の予定を並べ、残高が減る月と、その原因を確認するところから始めます。
利益と手元資金が一致しない理由
利益は売上と費用から計算しますが、資金繰りは実際の入金と支払いで動きます。たとえば、今月計上した売上の入金が翌月なら、今月の利益には反映されても、今月の預金は増えません。
ほかにも、在庫の購入や借入金の元金返済は資金を減らしますが、その全額が同じ月の費用になるとは限りません。反対に、減価償却費のように、費用でも当月の支払いを伴わないものがあります。
このため、損益だけでなく、入出金の時期を別に見る必要があります。
資金繰り表の基本は一つの式
基本は、次の足し引きです。
前月繰越 + 当月の入金 − 当月の支払い = 翌月繰越
実務では、入出金を次のように分けると原因を追いやすくなります。
- 営業収入:売上代金の入金など
- 営業支出:仕入、外注費、給与、家賃、経費など
- 財務収支:借入による入金、借入金元金の返済など
- 臨時の入出金:設備購入、納税など、毎月ではない動き
分類に迷う項目があっても、最初は入金予定日、支払予定日、金額を漏れなく置くことを優先します。
作成前に集める資料
次の資料から、予定日と金額を拾います。
- 現在の現預金残高と口座明細
- 売上請求書、売掛金一覧、入金予定
- 仕入・外注・経費の請求書、買掛金一覧、支払予定
- 給与、家賃、税・社会保険など定期的な支払い
- 借入金の返済予定
- 設備購入や賞与など臨時支出の予定
資料を毎月集める流れが整っていない場合は、先に月次の経理を早く締めるための資料回収チェックリストを使うと、資金繰り表の更新もしやすくなります。
3か月分を記入してみる
以下は、説明用に作成した架空の会社の例です。金額の単位は万円です。
| 項目 | 4月 | 5月 | 6月 |
|---|---|---|---|
| 前月繰越 | 300 | 330 | 310 |
| 営業収入 | 220 | 260 | 280 |
| 営業支出 | 170 | 180 | 190 |
| 臨時支出 | 20 | 100 | 30 |
| 翌月繰越 | 330 | 310 | 370 |
4月は「300+220−170−20=330」、5月は「330+260−180−100=310」です。5月は営業収入が増えていても、臨時支出があるため翌月繰越が減っています。6月は「310+280−190−30=370」となり、残高が戻る見込みです。
大切なのは、売上予定をそのまま入金欄へ置かず、実際の入金予定月へ置くことです。支払いも同じように、費用が発生する月ではなく、実際に支払う月で見ます。
完成後はこの順番で見る
- 翌月繰越がいつ、どこまで減るか
- 残高が減る月に、大きな支払いがないか
- 売上計上から入金までのずれが長くなっていないか
- 給与や家賃など、毎月固定で出ていく金額はいくらか
- 前回の見込みと実績に、どの程度の差が出たか
一律の「安全な残高」を決めるのではなく、自社の支払条件、入金サイクル、季節変動に照らして確認します。最初は月末残高だけでも構いませんが、支払いが集中する会社では週ごとに補助表を作ると、月の途中の動きも確認できます。
AIで更新作業を効率化する
資金繰り表は、一度作って終わりではありません。請求書、口座明細、返済予定などから数字を集め、見込みと実績を更新して初めて判断に使えます。
AIは、資料から入出金候補を拾う、予定月や費目の候補を付ける、見込みと実績の差を一覧にする、といった作業を支援できます。ただし、取引の背景、予定日の変更、例外的な支払いは、人が確認して確定します。
Tracc Freeでは、資料の集め方から資金繰りの見える化、AIを使って更新し続けられる仕組みづくりまで、専門家が実務に合わせて支援します。
計画策定から資金繰りの把握まで支援します
資金繰り表を経営判断に生かすには、数字を並べるだけでなく、売上、固定費、投資などの計画と結び付けることが大切です。計画と実際の入出金を毎月照らし合わせると、想定との差に早く気付き、次の判断へ反映しやすくなります。
Tracc Freeでは、経営支援の一環として、事業や数値の計画策定から資金繰りの見える化、見込みと実績の確認、継続的な更新まで一緒に進めます。「計画を作っても数字の管理につながらない」「今後の資金の動きを整理したい」といった段階からご相談いただけます。
まとめ
資金繰り表は、前月繰越に当月の入金を加え、支払いを差し引くところから作れます。まず3か月分を並べ、残高が減る月、その原因、見込みと実績の差を月に一度更新してみてください。
基本構造と項目の考え方は、J-Net21「資金繰り表を活用する」と「資金繰り表って何ですか?また、どのようにして作成するのですか?」、利益と資金の違いはJ-Net21「資金繰りとは」で確認できます。