ChatGPT、Claude、Microsoft 365 Copilot、Google Workspace with Gemini、NotebookLMなど、生成AIサービスの名前を聞く機会は増えましたが、「自社のどの業務に、どれを使えばよいか」は分かりにくいところです。生成AIは万能ではなく、得意な業務とそうでない業務があり、向いているツールも既存の業務環境によって変わります。ここでは、中小企業がAIで負担を減らしやすい5つの業務と、主要5ツールの向いている用途・違いを整理し、さらにAIエージェントを使って業務自動化へ進む考え方を紹介します。
生成AIは業務によって向き不向きがある
生成AIは、文章の下書きや情報整理など、人が時間をかけていた作業の一部を支援できます。ただし得意なのは文章・要約・比較などが中心で、金額や日付など正確性が求められる情報は、AIの出力をそのまま確定値として扱わず、人が確認する前提で使う必要があります。また、AIサービスは普段の業務で使っているソフトウェアとの相性によって、導入のしやすさが変わります。Microsoft 365を中心に使っている会社と、Google Workspaceを中心に使っている会社では、相性のよいツールが異なります。
AIで負担を減らしやすい5つの業務
1. 文書・メール作成
提案書や社内向け文書、メールの下書きを、要点を伝えるだけで作成できます。文面の型を毎回考える手間は減りますが、宛先、金額、固有名詞などは送信前に人が確認します。
2. 会議要約
会議の記録やメモから、決定事項と次のアクションを整理できます。発言の意図やニュアンスの解釈が必要な部分は、参加者が確認してから共有すると誤解を防げます。
3. 表計算の補助
数式の作成、データの並び替えや集計方法の提案など、表計算の操作を助けます。計算結果や集計範囲は、実務で使う前に人が検算しておくと安心です。
4. 情報収集・比較
制度や競合、商品情報など、複数の資料を横断して要点を整理し、比較のたたき台を作れます。最終的な判断や社外への発信は、出典を確認したうえで人が行います。
5. 社内資料検索
社内のマニュアルや過去資料から、必要な情報を探す時間を短縮できます。検索対象の資料や参照範囲は、アクセス権限の設定に応じて事前に決めておきます。
主要5ツールの向いている用途と違い
文書作成や検索など似た機能を持つように見えても、5つのツールは向いている使い方が異なります。以下は2026年9月時点の公式情報をもとにした整理で、機能名や提供条件は今後変更される可能性があります。
| ツール | 向いている用途 | 向いている既存環境 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 業務を横断した下書き作成、思考整理、調査 | 特定の業務ソフトに縛られず幅広く使いたい会社 |
| Microsoft 365 Copilot | Word・Excel・Outlook・Teams内での作成や要約 | Microsoft 365を中心に業務を行っている会社 |
| Google Workspace with Gemini | Gmail・Docs・Sheets・Meet・Drive内での作成や検索 | Google Workspaceを中心に業務を行っている会社 |
| NotebookLM | 指定した資料を根拠にした調査・比較・要約 | 特定の資料の範囲内で整理したい場面 |
| Claude | 文章作成、分析、長い資料の要約・整理 | 文書量が多く、内容を読み込ませて整理したい会社 |
ChatGPTは特定の業務ソフトに縛られず、幅広い用途に使える点が特徴です。Claudeは文章作成や分析、長い資料の要約・整理に活用できます。Microsoft 365 CopilotとGoogle Workspace with Geminiは、それぞれ普段使っているオフィスソフトの中で動くため、既存の操作に近い形で使い始められます。NotebookLMは、指定した資料の範囲内で回答や要約を作る仕組みのため、社内資料や特定の調査資料を根拠にした整理に向いています。
どのツールが優れているかではなく、自社が普段使っている業務環境と目的に合わせて選ぶことが重要です。
選ぶときは機能の数より、環境・権限・データ・確認体制を見る
ツールを選ぶときに比較しがちなのは機能の数ですが、実務で重要なのは次の4点です。
- 既存の業務環境:普段使っているオフィスソフトや社内システムとの相性
- アクセス権限:誰がどの範囲の情報にアクセスでき、管理者がどこまで制御できるか
- 入力データの扱い:入力した情報が外部に送信される範囲や、学習に利用されるかどうか
- 人による確認体制:AIが作った候補を、誰が、どの段階で確認して最終判断するか
価格や機能を比較する前に、この4点を自社の状況に照らして整理すると選びやすくなります。本記事では価格の比較は行いません。機能名やプラン、対象条件は変更される可能性があるため、導入を検討する際は各提供元の最新情報を確認してください。
AIエージェントで定型業務を自動化する
対話型AIの活用に慣れた次の段階では、CodexやClaude CodeなどのAIエージェントを使い、複数の工程をまとめて実行する方法があります。たとえば、定期レポートに使うデータの整形、定型ファイルの作成、内容のチェックと更新といった手順を、社内ツールやスクリプトを通じて一連の流れにできます。
単発の質問や文章作成だけで終わらせず、繰り返し発生する業務を一連の流れとして任せる段階まで進めると、AIの効果をより得やすくなります。その際は、AIが操作できる範囲を限定し、外部送信や重要な更新の前に人が確認する仕組みを組み込みます。
小さく始めるための5段階
AIの導入は、一度に全社へ広げるのではなく、小さく始めて確認しながら範囲を広げる進め方が安全です。
- 対象業務を1つ選ぶ:上記5つの業務などから、負担の大きい業務を1つ選びます。
- ツールを選ぶ:既存の業務環境に合わせて、試すツールを決めます。
- 利用ルールを決める:入力してよい情報の範囲、確認する人、承認の手順を決めます。
- 小さく試す:一部の担当者・業務に限定して試行します。
- 効果を確認して広げる:作業時間や使い勝手を確認し、問題がなければ対象を広げます。
業務棚卸しからツール定着まで支援します
Tracc Freeでは、どのAIツールをどの業務に使うかで迷っている事業者に対し、業務の棚卸しから、ツールの選定、利用ルールの設計、小さな試行、運用への定着まで、一連の流れで伴走します。特定のAI製品を前提にするのではなく、既存の業務環境や社内の体制に合わせてどこから始めるかを一緒に整理します。DX・業務改善の観点から、経理以外の業務も含めた見直しが必要な場合も対応できます。
まとめ
中小企業がAIで負担を減らしやすいのは、文書・メール作成、会議要約、表計算の補助、情報収集・比較、社内資料検索の5つの業務です。ChatGPT、Claude、Microsoft 365 Copilot、Google Workspace with Gemini、NotebookLMはそれぞれ向いている用途と既存環境が異なります。まず1つの業務で試し、運用が固まったらCodexやClaude CodeなどのAIエージェントも使って、継続的な定型業務を一連の流れとして自動化することで、AIの効果をさらに広げられます。
各ツールの機能はOpenAI「ChatGPT for business」、Anthropic「Claude」、Microsoft「Microsoft 365 Copilot」、Google Workspaceヘルプ「Workspace with Gemini」、Google「Gemini Notebookのヘルプ」、OpenAI「Codex」、Anthropic「Claude Code」で確認できます。機能名や提供条件は今後変更される可能性があります。